おすすめ本 (9)

最後は私、3年生保護者のKです。いまさらイニシャルって(笑)
しかも4冊もおススメしてしまいました。思い切った絞込みができない典型です〜。
ですので、すみません、ちょっと長いので、2回に分けますね(笑)

ウエン王子とトラ」チェンジャンホン作・絵
人間達に自分の子ども達を殺された過去を持つトラが夜ごと村を荒らし人間達を襲っていた。そのトラの怒りを鎮めるために差し出されたのは国王の息子、幼いウエン王子。

初めてこの絵本を読んだときは思わず泣いてしまいました。子どもを殺されその怒り悲しみが深くトラの心をえぐっているというのに、このトラは小さく弱い生き物を愛する心を忘れてなかったのです。その昔自分の子ども達をやさしくくわえてやったように、ウエン王子をくわえ、涙するシーン、もう本当に心が揺さぶられました。
やがて長じたウエン王子は賢くやさしく勇気あふれる少年に育ちます。

私も息子達をトラに預けようかしら。娘も預かってくれるかしら(笑)
もう小さくはないんだけど(笑)


ストーリーもさることながら、絵がまた迫力満点で素晴らしいです。
筆の魅力、墨の魅力を全面に使い、絵を見ているだけで胸にぐっと迫ってきます。
高学年の読み聞かせに選んだことがあります。
あとで、そのときの子どもさんのお母さんから
「子どもがとても素敵な絵とお話だっていってて、借りてきたの」と聞きました。
さらには「トラの気持ちがわかる。あまりのことに泣いてしまった」とお母さん。
母親ならではの感想でした。
お子さんとお母さんのお話が素直に嬉しかったのを今でも憶えています。

失はれる物語」 乙一 著
夏になると必ず「新潮文庫の100冊」「ナツイチ(集英社)」「発見!角川文庫祭」
などなど、文庫本サイズで文庫本のおススメ図書の冊子が無料で出回りますよね。
その中に毎年のように選ばれる本に
「夏と花火と私の死体」という物騒なタイトルのものがありますが、その作者が乙一
これがデビュー作だそうです。
今年のものにもでていました。
そしてなんと今年はこの「失はれる物語」も!
これは短編集なのですが、表題作は、交通事故で全身不随になった男に残されたのは
右腕の感覚だけ、というお話。意思疎通が非常に狭い範囲に限られた世界で、男が思うものとは・・・。
なにやら非常に重く暗い物語が表題作となっていますが、他には

「傷」「Calling You」があり、この2作は映画化されています。
「傷」は人の怪我を自分の体に移す特殊な能力を持った少年と、その少年を守る、いわゆるはみ出しものの少年が互いを支えあいいたわりあいながら生きにくい世の中をなんとか生きていこうとする物語です。

「Calling You」は、友達のいない孤独な少女が想像で作った脳内携帯電話で遊ぶうちに実際に誰かにつながって・・・。誰につながったのか、その後も誰かとつながって、
やがて少女の世界(というか、気の持ちようかな)が変化し、リアルなつながりに・・・。ドラマティックな展開もありますが、やはり乙一、せつなく悲しい終わり方になりますね(ネタばれ?)しかしただのせつな悲しい系ではなく、かなり意表をつくオチも用意されています。

ハードカバーのものには全6編、文庫本には全8編はいってますが
いつも私が読んでいるのがハードカバーのほうで、
上に挙げた作品もいいですが、6編の中で最高に好きなのが
しあわせは子猫のかたち」です。
生きるのに不器用で、光ある世界になじめず、いつも日陰を選んで目立たないように、
他の人たちに迷惑にならないようにひっそり生きている主人公の青年。
その青年がいわくつきの家に住むようになり、いつしか彼の内面にもぽっと小さいけれど温かく明るい灯りがともるように。

人とうまく交われない、普通に話すのも難しく、話しかけられても気の利いた返答ができない、結果おどおどと自信がない青年の心理描写がとても細かく苦しくなるほどです。かなり感情移入しやすい人物なので、自分も同類であることに気づいたほどです。
こう書くと、暗〜い、地味〜なお話みたいですが、そういう部分もありますが(笑)
本筋はファンタジーです。
淡くやさしく決して押し付けがましくない「存在」がこのお話のひとつの軸となっています。

やっぱりせつな悲しい系ですが(笑)

現在高校2年生の息子(超生意気反抗期やっと下降気味?)のお気に入りでもあります。